あなたがもしプロのコーチのように話を聞く技術をマスターしたら生き方にどんな変化が訪れると思いますか?
あなたが話を聞くことで変化していく人たちをちょっと想像してみて下さい。
- のびのびと成長していく子供たち。
- 自分の生きがいを見つけることが出来る同僚たち。
- 実りあるアイデアが生まれる会議
どうでしょう?
話を聞く技術を身に着けるだけでこんな変化が訪れるのだとしたら。
EQリーダーシップという書籍にはリーダーとしての4つの特性のうちの一つにコーチ型リーダーシップという特性がありました。相手の話を引き出すことで、相手の可能性を伸ばす関りをすることが出来るリーダーシップです。
話を聞く技術を身に着けるという事はコーチ型リーダーシップを身に着けるという事でもあります。
あなたが話を聞く技術を身に着けることであなたの周囲に実りある変化が次々と起こって来るのです。本日の記事では僕たちプロのコーチが培ってきた話を聞く技術について書かせていただきますね。
Ⅰ.聞く耳を持つ
僕自身コーチングを学んで初めて分かったことがあります。それは、今まで自分がまったく人の話を聞けていなかったんだなという事です。それまでは営業や人事という人と関わる仕事をしてきたという自負もあり、話を聞くのが得意だと思ってたんですけどね。
でも、それは【井の中の蛙大海を知らず】状態だったんですよね。
おそらく、専門的な聞く技術を習ったことのない人はみなそういうレベルだと思います。もちろん、この記事をご覧のあなたも当てはまるでしょう。
何故そんなことが言えるのかって?それは人の思考はおしゃべりだからです。
ということで、簡単な実験を。今から3分間目を何も考えずに目を瞑ってみて下さい。これだけで、分かる事があるんです。たった3分間なのでぜひともチャレンジしてみて下さい。
では、スタート
どうでした?3分間何も考えずに目を瞑っていることは出来ましたか?無理でしたよね。頭の中の声が3分間ひっきりなしに鳴り響いていましたもんね。
おしゃべりをやめない思考
この実験は人の脳がいかにおしゃべり好きかを確認するための簡単な方法です。普段、人は自分が頭の中でおしゃべりを続けているなんて夢にも思いません。でも、実際この頭の中のノイズは気づかなくてもまるで壊れたラジオのように四六時中流れっぱなしになっているんです。
話を聞いている最中も然りです。当然、頭の中にノイズが流れっぱなしの状態では人の話なんて右から左へ流れて行ってしまいます。専門的な聞く技術を習ったことがない人はこの事実にさえ気が付いていないのです。かくいう僕もその一人だったんですけどね。
ただ、あなたはおしゃべりをやめない思考の存在に気付くことが出来ました。この存在に気付くのと気付かないのとでは話を聞くことにおいて雲泥の差なんですよね。
おしゃべりをやめない思考の存在に気付くことで話を聞く専門家への階段を一歩上がれるのです。
思考に気付いたうえで相手に焦点をあてる
コーチ業界では自分の思考に意識が向いている状態を内的傾聴、相手の話に意識が向いている状態を集中的傾聴と呼んでいます。
悟りを開いたお坊さんでもない限り、頭の中の思考を空にすることなど出来ません。それはコーチも同じくです。でも、コーチが一般の人と違うのは、頭の中のおしゃべりに気付くことが出来るという事です。
気付くことが出来れば対処は簡単です。
頭の声に気付くたびに相手の話により意識を傾ける集中的傾聴に切り替えるようにすればいいのですから。
例えば、
話し手「今日はこんなことがあってですね。」
聞き手「あー、腹減ったなー」
聞き手「あぶない。あぶない。集中的傾聴に切り替えよう」
こんな感じで、自分の思考に引っ張られないように自己管理をすることが出来るようになると、人の話に集中して耳を傾ける時間が必然的に長くなっていくんですよね。
集中的傾聴の練習方法
とはいえ、集中的傾聴のやり方が分からないよーというあなた。ご心配には及びません。集中的傾聴には簡単な練習方法があるからです。今から紹介する練習方法を繰り返して行くと、自然と集中的傾聴が身につくという簡単でありながら、効果の高いやり方をお伝えして行きますね。
その方法とは心の中で相手に対してインタビュアーのようにマイクを差し出すイメージを持つ事です。
たったこれだけ?と思うかもしれませんが、僕たちプロのコーチも初めは人の話を聞くときに毎日のように練習していた鉄板的な練習内容です。ボクサーで言えばジャブの練習のようなものです。
このほかにも、心の中で相手にスポットライトをあてたりとか、相手に対して両手を伸ばしたりとかバリエーションは様々です。
こんな単純な練習でもやり続けて行くうちに、内的傾聴から意識を背け、集中的傾聴に意識を保つ事が出来るようになります。
是非、試してみて下さい。
Ⅱ.相手の状態を言葉に出して伝える
あなたはジョハリの窓という心理学モデルをご存知でしょうか?上記の画像のように4つの窓から構成されています。
- 自分自身も知っていて、他人も知っている開放の窓
- 自分は知っているけれども、他人は気づいていない秘密の窓
- 他人は知っているけれども、自分では気づいていない盲点の窓
- 自分も他人も気づいていない未知の窓
あたた自身もこの4つの窓を全て持っているのです。
相手の状態を言葉にして伝えてあげるということは、盲点の窓を相手に対して伝えていくという事でもあります。
この盲点の窓を伝えることで、伝えられた相手が得る気づきは大きなものとなります。
例えば、
話し手「来週から家族旅行があるんですよ」
聞き手「なんだか、折角の旅行なのに楽しそうではないですね」
話し手「えっ、そうですか?そういえば、仕事が忙しくてまったく旅行の準備も出来ていないので、これから準備の事を考えると気が滅入って来るんですよね。」
こんな、感じで相手の状態を感じたままに伝えてあげるだけで、相手は盲点の窓に気付き、相手から本質的な話を聞き出す突破口になることも多いんです。
プロのコーチは相手の状態を言葉に出して伝えることをまるで空気を吸うように当たり前のようにやっているんですね。それほど、プロのコーチの中でも重要な話を聞く技術だという事ですね。
Ⅲ.要約
話し手「昨日飼ってる猫が散歩に出てから全く帰ってこなくってどうしたものかと思ってたら朝方ひょっこり帰ってきてやんの。飼い主の心配も考えずに。まいっちゃうよ。」
聞き手「猫ちゃんが一晩中戻ってこなかったので心身ともにお応えになられたようですね。」
話を要約して話し手に戻してあげることは、話し手に対して自分の話をしっかりと聞いてもらっているという安心感を与えます。要約も話を聞く技術として積極的に使っていきたい技術です。
また、要約に似たスキルでバックトラッキングというスキルもあります。
こちらは相手の話をオウム返しする方法です。
話し手「急に雨が降ってずぶぬれになっちゃったよ」
聞き手「急に雨が降ってずぶぬれになってしまったんですね」
このようにバックトラッキングとは相手が話した内容をそのまま相手に返して行く方法です。
こちらも話し手に対して、話をしっかり受け止めてくれているという安心感を与えます。ですが、あまりに多用してしまうとからかわれているように感じてしまうので要約と併せて使っていくことをおすすめします。
要約を意識していると何がいいかというと、相手の話を聞き逃すまいと自然と集中的傾聴の訓練になる所です。また、相手の話のポイントを掴みやすくもなります。
Ⅳ.相手の世界観で話を聞く
僕らプロのコーチは相手の世界観で話を聞くことをとても大切にしています。逆にコーチングを勉強したての人は自分の世界観に相手を呼び込んでしまうんです。相手の世界観で話を聞くと、話し手は次から次に話を広げていきますが、自分の世界観に呼び込んでしまうと会話はぷっつりと途絶えてしまいます。もし、会話が続いたとしてもそれは無理やり話をさせているだけの悪い聞き方になってしまいます。
自分の世界観に相手を呼び込んでしまう例
話し手「今、仕事が山のように積み重なっていて大変なんだよ」
聞き手「その仕事の大変さってフルマラソン走るぐらい大変なの?」
相手の世界観で話を聞く例
話し手「今、仕事が山のように積み重なっていて大変なんだよ」
聞き手「その積み重なった山ってどのくらいの高さなのかな?」
この2つの例は極端でしたが、前者と後者でその後の話の質は大きく変わって来ることは目に見えるのではないでしょうか?
前者は話の文脈もまったく聞いてないですよね。仕事が大変と言ってるのに、「フルマラソンくらい大変なの?」って聞いて来るんですよ。僕だったらこいつ何言ってんだ?と思ってしまいますもん。
「えっ?大変さの質が違うでしょ(バカなの?)」って言っちゃいますね。
一方、後者はどうでしょう?聞き手が「仕事が山のように積み重なっているという表現」を拾い取り、その山の高さを聞いています。
このように相手の世界観に合わせて話を聞くと面白い事が起こって来ます。では、後者の続きを見て行きましょう。
聞き手「その積み重なった山ってどのくらいの高さなのかな?」
話し手「富士山とは言わないまでも、高尾山くらいはあるかな?」
聞き手「その高尾山をどんな風に見てるの?」
話し手「どうやって攻略しようかなーって挑戦的な感じだね。」
聞き手「なんだか登り切ってやるぞって熱意が伝わって来るね」
話し手「そうそう。今はなんか登る前だから大変そうだなって感じがあるけど、熱意はすっごくあるんだよね」
聞き手「その熱意で山積みの仕事を片付けたらすっごい自身につながりそうだね」
話し手「だよね。そう。絶対自信につながると思うよ。」
聞き手「頑張ってるんだね。君なら絶対やり切れるよ。応援してるね。」
話し手「ありがとう。とてもやる気が出て来たよ。」
このように相手の世界観で話を聞くことが出来ると、相手とイメージが共有されます。相手のイメージの世界の中で会話が成り立つのです。
相手も自分のイメージから派生した話だからこそ、話をどんどん広げて行きやすいんですよね。コーチはこのように相手の世界観で話を聞くことを習慣化しています。
慣れるのには練習を積み重ねる必要がありますが、慣れてしまうと相手と同じ世界観を共有できるのでとても楽しく有意義な会話になっていきます。
Ⅴ.相手の内面の素晴らしい部分を言葉に出して伝える
僕たちコーチは相手の内面の素晴らしい部分を見つけたらそれを言葉に出して相手に伝えることを意識的に行っています。人は自分がした行為や行動に対して認められる事はあっても、自分自身の内面を認められる機械ってそうはないんですよね。
折角素晴らしい部分があるのに、自分ではそこに気が付かない。これって実にもったいない事です。また、内面の素晴らしい部分を認められて嫌な気分になる人はひねくれものでもない限りそうはいません。
話し手の気分がよくなる上に、相手の強みも同時に伝えることが出来る方法です。
話し手「昨日、ようやく試験に受かったよ。」
聞き手「ずっと努力し続けてたもんね。忍耐力のなせる業だね。おめでとう。」
こんな感じで相手の状態を言葉に出して伝えるのとは違い、内面をしっかりと認めて声に出して伝えることが特徴です。
下記のリンクではこの話を聞く技術に特化してをまとめて記事にさせていただきました。是非ご一読いただければと思います。
Ⅵ.様々な状況から聞いてみる
コーチングでは様々な状況から聞くことが一般的ですが、この聞き方もコーチング特有の聞き方のひとつでしょうね。ただ、僕は通常の会話でも使い勝手がいいので頻繁につかってますけどね。
どのような話を聞く技術かというと、相手の話に対して様々な状況から聞いてみるというだけです。
話し手「進路で迷ってて」
というお題に対しての例をいくつか
「未来の最高の状態から見たら今ってどう見えるかな?」
「上空1000メートルから見ると今の状況ってどんな感じに映ると思う?」
「過去、最高に輝いてた時を思い出して見て。その状態から今の状態ってどんな感じに見えると思う?」
「理想の仕事をしている知り合いだったら今の状況をどんな風にとらえるかな?」
「お坊さんだったらどう言うと思う?」などなど
最後は遊び心で(笑)
って、実際僕は会話でこういう風にいろんな状況から現状を捉えるような流れにする事が大好きです。実際のコーチングスキルなんですけれども、通常の会話でも使えてしまうんですよね。
この話を聞く技術の利点は、相手が一点でしか物事を見えなくなってしまっているような時。様々な視点を提示してあげる事で、視野を広げて行く効果かがある事です。
その威力は折り紙付き。なーんだ。こんなことにはまってたんだーと気付くのは時間の問題です。そして、なによりも面白い。僕はだんだんふざけてしまうこともありますが、それでも効果はとても高いですよ。
「オスを食べ終わった後のメスカマキリだったらどう思うかな?」とか、こんな難易度の高い質問を振っても人間ってすごいもので、その場のインスピレーションで答えられてしまうんですよ。たいていの人は。
話を聞くって受け手な印象がありますが、僕から言わせてもらうと攻め手ですね。僕自身プロのコーチですがドSな聞き上手を自称してますもん(笑)
Ⅶ.要するに何かをズバッと聞いてみる
要は何を言いたいのかをズバッと聞く技術。当然コーチングにもあります。相手がとりとめもない事を延々と話しだしてしまう人も少なくはないのでそんな時には要は何が言いたいのか?ということを聞きます。
話し手「昨日、上司から急に残業を申し付けられて、夜遅くまで仕事をしていたのですが、その連絡を入れなかった事に家内は怒ってしまって。折角料理を作って待っていたのにと。でも、こちらも急な残業で仕事も押していて報告するゆとりがなかったんですよね。それなのにずっと鬼の首を取ったかのように・・・」
聞き手「要は何を言いたいんですか?」
話し手「夫婦関係が悪化しちゃったということです。」
コーチングではテーマがしっかりと定まっていないと単に話を吐き出す場になってしまいかねません。だからこそ、コーチは相手が延々と話をしだしてしまった時には何を伝えたいのかを明確にする必要があります。そのため、要点をズバッと聞くんですね。
これはもちろん、通常の会話でも使えます。聞き上手の人は話を聞き続ける事だけがうまいのではありません。つまらない話やその場に必要ない話をばっさりと切っていくからこそ、無駄な話に労力や時間を割かないように出来るんですね。
無駄な話を延々と聞かされている人は聞き上手ではありません。本当の聞き上手はビシッと話に区切りをつけることが出来る人です。
これは慣れですね。
「要するに何?」と聞くことを意識的に行い続ける練習が必要となってくる聞く技術です。
Ⅷ.相手の立場に寄り添った質問
相手の立場に寄り添った質問を行う事はコーチとして最も大切な資質のひとつです。
「あなたはどう思っているのか?」「あなたはどう感じているのか?」「あなたはどう受け止めているのか?」
このように相手の立場に寄り添った質問をすることで、相手は自分の立場から質問に対して受け答えが出来ます。相手が話したい方向にいくらでも話を広げていける質問になるんですよね。
一方、相手の話を狭めてしまう質問も存在します。
「調子はどうですか?」「今の仕事は好きですか?」「いいお天気ですよね?」など
相手が「はい」か「いいえ」でしか答えられない質問です。
聞き上手になるには相手の立場に寄り添った質問で相手に話をしてもらう事が基本となります。
そして、脈絡のない話や的を得ない話は要するに何を言いたいのか?を明確にし、逆に相手にとって価値のありそうな話が出て来た時には先に紹介した話を聞く技術で深堀りしていくのがベストです。
さいごに
いろいろなタイプの話を聞く技術を紹介させていただきました。すぐに使える技術もあれば、慣れが必要になって来る技術もあります。とはいえ、ひとつひとつがプロのコーチも使っているほど強力な技術ですから知っておいて損はありません。
まずは、身につけられそうな技術ひとつに的を絞って練習してみてはいかがでしょうか?きっと、あなたの話の聞き方の技術は飛躍的に向上して行く事でしょう。それに比例して、あなたの周囲の人たちに大きな変化が表れてくる事でしょう。
話を聞く技術を身に着けることで、あなたは周囲を自発的に成長させて行く貴重な人材になれてしまいます。ゆっくりとひとつひとつ身に着けて見て下さいね。
上記の記事では傾聴力の高め方について具体的に分かりやすく書きました。
併せてご覧いただければ幸いです。
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